かんごノート by logical nurse

現役ICUナースによるoutput&どこかのナースのためになればいいなのブログ。キーワードはロジカルシンキング。

人工呼吸器の自発呼吸の見方を知りたい!-お困りナースへおくる先輩ノートNo.3-

2018/6/12

第3回「お困りナースへ送る先輩ノート」
〜人工呼吸器の自発呼吸の見方〜についてです。

 

新卒で入ったナースも病棟などでは、そろそろ本格的に受け持ちを始めているところも多いでしょうし、呼吸器などの医療機器がついた患者さんの受け持ちもするようになってきているのではないでしょうか。

また、既卒者でも転職や異動で「今まで呼吸器は見たことがない。」なんてナースもいるでしょう。

 

教育体制が整っている現場であれば、困ることはないようなお題ですが・・・
いざ、受け持ちを始めてみると

「そもそも人工呼吸器がなんとなくしか分からない。」

「自発呼吸があるとかないとか、みんな記録に書いているけどどこを見るの?」

「アラームなったけど、どうすればいいか分からない。」

・・・などなど、人工呼吸器にまつわる疑問は絶えないと思います。

 

わからないまま患者さんを受け持つことほど、不安でコワイことはないですよね。

 

本来は、分からなければすぐに先輩ナースや医師へ確認する。ができれば良いのですが、「聞きづらい・・・。」「聞いても勉強してきて!って言われる」古〜い教育体制の現場も多いかと思います。

 

そこで、人工呼吸器でまず始めにぶつかるであろう

「自発呼吸ってどこでどう見るの!?」

について取り上げたいと思います。

 

これ意外に初歩的すぎるがゆえに、呼吸器の本やサイトなどでも分かっている前提で話が進んでいることがとても多いです(笑)。

 

それでは、本日のノート始めていきましょう。 

 

自発呼吸は人工呼吸器のココをチェック

チェックするのはたった2つ。

グラフィックの圧波形に吸気努力があるかないか。
 (呼吸器にグラフィック波形がでる場合)

実測の呼吸回数と設定換気回数(呼吸回数)に差があるかないか。

 

基本的にはこの2つが簡単に自発呼吸を知る術になります。
最近の人工呼吸器にはほとんどグラフィックモニターが搭載されていますが、旧型やコンパクトなものなどはグラフィックの出ないものもあります。

その場合は②で見るか、吸引の時など呼吸器を外した際に自発呼吸があるかないかを見たりします。

f:id:logicalnurse:20171126082601j:plainただし、自発呼吸がなくて呼吸器でサポートをしている方は、外している時間は呼吸ができていません!
「自発呼吸を見るために呼吸器を外す。」
「吸引が終わっても、観察するためにすぐに呼吸器を装着しない。」

などは、NGです!!吸引で外した際など、手技の合間の一瞬で確認できればよしぐらいにしておきましょう。

 

それでは、1つずつ見ていきます。

グラフィックで見る自発呼吸

上記の「①グラフィックの圧波形に吸気努力があるかないか」についてです。
基本的なグラフィック波形として、気道内圧・流量・換気量が表示されます。
下図では、モードごとにPCV・VCV・PSVの順に上記3種類の基本波形を示しています。

f:id:logicalnurse:20180612094912j:plain

人工呼吸器 自発呼吸のグラフィック波形


まず始めに、グラフィックの気道内圧波形に注目します。ピンクの丸で囲んだ部分の波形にを見ると、波形が基線より下側に少し下がっていますよね。それが、吸気努力(=息を吸おうとしている)=自発呼吸になります。

自発呼吸は陰圧、人工呼吸は陽圧での呼吸になります。自発呼吸は吸気時に肺を広げるため陰圧になります。そのため、圧波形が陰圧方向(下向き)に吸気努力として現れます。

呼吸器の機種によっては、自発呼吸だけ赤色の波形で出るなど、色分けされている場合もありますね。

自発呼吸をみたい場合には、この吸気努力があるかないかをチェックします。

↓グラフィックの基本については前回取り上げていますので、コチラをどうぞ。 

www.logicalnurse.com

 

実測の呼吸回数と設定換気回数からみる自発呼吸

次に、「②の実測の呼吸回数と設定換気回数に差があるかないか」についてです。

人工呼吸器のモニターには、常に実測値が色々と表示されていますね。
呼吸回数・TV(一回換気量)・MV(分時換気量)・PIP(最高気道内圧)など測定項目やウィンドウの種類も各呼吸器のメーカーによって異なると思います。

ここで注目するのは「呼吸(換気)回数」です。
「設定換気回数<実測の呼吸回数=自発呼吸がある」とも言えますが、ミスカウントなどもあるため一概に絶対とは言い切れません。

 

そもそも、最低限のモードを理解していなければなりませんが、ものすごくシンプルに細かいことは抜きにしておさらいすると・・・

A/C:自発呼吸があればアシスト、なければコントロール(=強制換気)

SIMV:設定回数分だけA/Cと同じように強制換気。設定回数以上は、強制換気によるサポートはなし。加えてPSを付加していれば、自発呼吸の時に呼吸器任せのタイミングでPSがかかる。ただし、自発呼吸全てにPSがかかるわけではない。ゆえに、サポートなしの自発呼吸以外に2種類の換気様式が混在するため、呼吸仕事量が増加しやすいモード。

PSV/CPAP:すべて自発呼吸(無呼吸の場合はバックアップ設定で強制換気) 

ということになります。

f:id:logicalnurse:20171203015037j:plainここで大切なのは、「モードごとに、換気回数の示す意味合いが異なる」ということです。

 

↓人工呼吸器のモードについてのおさらいはコチラ。

www.logicalnurse.com

 

 

モードごとに見ていきましょう。 

A/Cの場合

上記のまま、自発呼吸があればアシスト・なければコントロールで強制換気が入ります。が、基本的にこのモードを選択する場合は、自発呼吸がないためフルサポートを行う場合です。

なので、基本的に設定換気回数=実測の呼吸回数になっていると思います。

設定換気回数を上回っている場合には、自発呼吸があるということになります。

自発呼吸が多く呼吸状態が良いようであればモードの変更も考えなくてはなりませんし、自発呼吸があって非同調となっている場合・肺の状態としてまだ休ませなければならない場合などは、鎮静剤や筋弛緩剤の調整などが必要なので先輩ナースや医師へ相談してみましょう。

 

SIMVの場合

設定換気回数=実測の呼吸回数
→設定された機械換気回数しか行っていないので、この場合は「自発呼吸がない」ということになります。要するに、先ほどのA/Cと同じ状態なわけです。この場合には、SIMVである必要はないのでA/Cへのモード変更を検討しても良いと思います。

 

設定換気回数<実測の呼吸回数

→設定換気回数以上の呼吸は「自発呼吸がある」ということです。この場合、アシストコントロールする必要がないので、PSVCPAPへモード変更が可能です。

 

PSV/CPAPの場合

このモードは「自発呼吸があることが前提」になりますので、言うまでもなくすべて自発呼吸になりますね(笑)。

無呼吸時のバックアップで強制換気が入るように設定されていると思いますが、その場合には無呼吸アラームなどが鳴るのですぐに気づくでしょう。

 

 

以上が「自発呼吸の見方」になります。少しはコツが掴めたでしょうか?
4月からの集中力の糸もそろそろ途切れ、疲れが溜まってきた頃ではないでしょうか?
あなたの人生全てが看護・看護師である必要はありません。休息をとったり、他の楽しみも見つけながら、バランスよくナースのお仕事もできるといいですね。

わからないことはそのままにせず、どんどん解決していきましょ〜その方が安心して自信を持って看護できると思いますよ。焦ったり時間に追われたら、一度止まって深呼吸。意外と時間はつくれるものです、一緒に頑張っていきましょうね〜ブログを通じて新入職の皆さんはじめ、ナースの皆さんを応援しています。

 

それでは、今日のノートはこの辺で。

 

おとーふ。