かんごノート by logical nurse

現役ICUナースによるoutput&どこかのナースのためになればいいなのブログ。キーワードはロジカルシンキング。

電解質異常の看護管理①:電解質ってそんなに大事?何に気をつけたらいいの?

2018/10/6

本日は「電解質」についてです。

イオンやミネラルなんて呼ばれたりもしますね。

この目に見えない小さな物質が、あなたやわたしの生命を維持する上でとても重要な役割を担ってくれています。

ERやICUなど超急性期〜急性期では、異常をきたすことが多く電解質補正の指示が出る頻度も高いのではないかと思います。

電解質のアンバランスは様々な疾患や病態を引き起こし、またそれらにより電解質異常が引き起こされる場合もあります。

どちらのパターンでも、すぐに異常に気づけるようポイントを一緒にチェックしてみましょう。

↓内容はコチラ、読み飛ばしたい方はコチラからどうぞ。

 

なるほど電解質の補正が必要なワケ

 今これを読んでくださっているあなたも、私おとーふも毎日飲んだり食べたり、排泄をしたりしますよね。この当たり前のようにやっている行動が、体液(水分や電解質)バランスを一定に保つためであり、その維持調整機能を「恒常性(ホメオスターシス)」と言います。

普段、健康な場合には飲食や排泄がきちんとできているため、この恒常性が保たれています。

しかし食欲低下、嘔吐や下痢、疾患など・・・
IN/OUTバランスが崩れた時や、調節機能を担う臓器が何らかの原因でうまく機能しなくなった時に電解質異常が起こります。
そこには、ホルモンや神経系の働きも密接に関わってきます。

それに加えて医原性で引き起こされる電解質異常が多いことも、知っておかなければなりません。

 

はじめに知っておきたい体液と電解質のこと 

では、質問です。

「カラダ(成人)の構成で、水分が占める割合は体重あたり何%でしょうか?」 

・ 

簡単すぎましたかね(笑)?

 

答えは、60%

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内水分量のイメージ

と言われています。 (ちなみに小児は80%、高齢者は50%)
残りの40%は、多い順にタンパク質・脂質・無機質で構成されています。

次に、この60%の水分(=体液)が何で構成されているのかをみていきましょう。

まず大きくは「細胞内液」「細胞外液」に分かれます。
さらに細胞外液は「組織間液」血漿に分かれます。


これを体液60%中の割合で見ると・・・

細胞内液:40%
細胞外液:20% 
(うち組織間液:15%、血漿:5%)

となっています。

 

それぞれの役割は・・・

◉細胞内液の役割
代謝:エネルギー産生、タンパク合成
(細胞膜を通した物質交換で代謝

◉細胞外液の役割
・循環血液量の維持
・細胞への栄養素、酸素の運搬と代謝産物の運び出し

 

先ほどのそれぞれが占める割合を思い出してください。
細胞内液が40%、細胞外液が20%でしたね。細胞内液が2倍も多いのには理由があります。

細胞外液である組織間液や血漿(血液)が減った時=脱水や出血など循環血液量が減った時に、細胞内液の水分を移動し細胞外に分けてくれるのです。(この時に、生命維持に関係が低い皮膚などから優先的に分け与えるため、脱水所見として皮膚や粘膜の乾燥などが現れます。)

これら細胞外液の水分の移動や、細胞内液の代謝を行なってくれるのも電解質になります。これが仮にただの水だけ(電解質が含まれない)であった場合、何も機能しないのです。

そのため、電解質異常が起きた際には恒常性が破綻していると考えられ、偏りの大きい場合には補正を行います。そのまま放置すれば、生命に関わることも少なくありません。

 

 電解質って体液中にどんなものがあるの?

体液中の電解質の分布とそれぞれの主な役割についてみていきます。

 

◉細胞外液に分布する電解質と役割

Na+ ナトリウム
→浸透圧、酸塩基平衡の維持・細胞外液、循環血液量維持

Cl- クロール
→細胞外液の主な陰イオン、水分バランスの維持

HCO3- 重炭酸
→血液pHの維持

 

◉細胞内液に分布する電解質と役割

K+ カリウム
→細胞内液の主な陽イオン、神経や筋の活動に関与、浸透圧・酸塩基平衡の維持に関与

Mg2+ マグネシウム
→酸素の活性化、蛋白合成、骨や歯のミネラル

Ca2+ カルシウム
→骨・歯の形成、筋収縮

リン
→骨・歯の形成、糖代謝(ATPの生成)

 

細胞外液ではNa+とCl-、細胞内液ではK+ダントツ多く分布しています。

 

主な電解質異常と症状

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引用元:日本内科学会雑誌 第101巻 第 6 号

それぞれの電解質異常により引き起こされる主な症状が表1にまとめてあります。
検査データで電解質の異常を見た時には、このような症状の有無に注意して観察していきましょう。反対にこれらの症状がある場合には、電解質異常が起きてないかチェックしてみると良いですね。
 

f:id:logicalnurse:20171126082509j:plainまた、冒頭でも述べましたが、電解質はホルモンや神経系の働きも密接に関わっています。そのため、ホルモンの分泌に関わる臓器の異常や摘出などの術後、脳疾患や心疾患など神経系の働きを要する疾患などは、働きかけるホルモン分泌自体が不安定となり、より電解質異常を起こしやすいためデータ異常や症状の出現を見落とさないようにしていきましょう。
下に例を挙げていきますが、ほんの一例なので参考までにどうぞ。

 

電解質異常と主な疾患・原因例

<ナトリウム異常>
低Na血症
甲状腺機能低下、副腎不全、SIADH、肝硬変など

高Na血症
:尿崩症、大量発汗など

 

カリウム異常>
低K血症
原発性アルドステロン症、クッシング症候群、腎血管性高血圧、下痢、嘔吐など

高K血症
:腎不全、アルドステロン欠乏、インスリン欠乏、代謝性アシドーシスなど

 

<カルシウム異常>
低Ca血症
ビタミンD欠乏、副甲状腺機能低下症、急性膵炎など

高Ca血症
:サルコイドーシス、副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、結核など

 

マグネシウム異常>

低Mg血症
:腎排泄亢進、低栄養、吸収障害など

高Mg血症
:腎不全、薬剤性など

 
☆重炭酸イオンは血ガスでふれているので、コチラ↓でチェックしてください。 

www.logicalnurse.com

 

 
電解質異常を見かけたら看護師がすべきことは何?

✔︎検査データの確認/共有…血液・尿・血液ガス(A/V可)

✔︎モニタリング・バイタルサイン測定

✔︎身体初見の有無・症状の緩和

✔︎12誘導心電図

✔︎基礎疾患や服薬歴などの聴取・確認

医師の診断に基づき治療開始

緊急性の高い場合:注射/点滴(高値は電解質負荷に注意)・透析 
緊急性の低い場合:内服補正で経過観察

補正後の検査データ・症状の有無や緩和のフォロー

 

電解質異常を起こした原因にも着目し、医原性であれば薬剤コントロールを行う、食欲低下や生活習慣によるものであれば、再発予防のため退院後の生活に向けた指導を行うなど、原因に合わせた看護介入が必要となってきます。

 

以上が、電解質異常の看護管理になります。
電解質異常は奥が深いので、高K血症、低Na血症など1つで1記事できてしまうほどのボリュームがあります。なので、今回は電解質異常の入り口として概要に近い感じで取り上げてみました。

今後、続編で細かいものも追っていくかもしれませんので、シリーズ①とさせていただきました。

 

夜が明けてきたので、本日は就寝させていただきます〜

おとーふ。