スワンガンツカテーテル看護管理①SGカテーテルがわかる!コレが管理ポイント
2018/8/27
今日は前回のフロートラックセンサーに引き続き、循環管理の動態モニターとして使用されるスワンガンツカテーテルについて取り上げていきます。
こちらの記事は、全2回に分けて書いていきます。
第1回はスワンガンツカテーテルを知ることがメインになっています。
第2回は、スワンガンツカテーテルで得たデータから何を考えるかを主軸に循環管理について書いていこうと思っています。
それでは、始めましょう。
一般名称としては、肺動脈カテーテルと呼ばれています。商品名としては、エドワーズライフサイエンス社さんがSwan-Ganzカテーテルという名称で製品を出されていますし、そもそも開発者の名前がついているので呼びやすいのかもしれません。
臨床の日常会話では「スワンガンツ」「ガンツ」「肺動脈カテ(PAC)」「右心カテ」とか呼ばれることが多いです。
スワンガンツカテーテルで心機能が見える!?
スワンガンツカテーテルって一体なんなのでしょう?
volumeの指標としては、近年主役の座を奪われたスワンガンツカテーテルではありますが、心臓血管外科の術後や心原性ショックなど心機能の低下している場合の循環管理では詳細な情報が得られるため、使用されることが多いです。また、心臓カテーテル検査などでも心機能評価のために使用されています。
1)何のために使うのか?
【目的】
血行動態・心機能の評価および血行動態の持続的なモニタリング
簡単な表現で書くと・・・
フロートラックの記事で循環の3要素について書きましたが、①ポンプ(心臓)と②パイプ(血管)と③流れる水(循環血液量)で成り立つシステムのことでしたね。
↓詳しくはフロートラックセンサーの記事で確認してください。
このポンプである心臓が故障(ACS、心不全など)したり、故障したポンプを改良(手術など)した時に、「システム(循環)のどこに異常があるのか、正常に機能しているのかを知る」ために使用されるツールがスワンガンツカテーテルです。
その中でも、循環の要である
ポンプ(心臓)を徹底的に調べようよ〜。
ということです。
そして、
どうせ調べるなら、一気に色んなこと調べられる機能搭載しちゃおうよ〜。
という感じで、いくつかのスペックが搭載されたスワンガンツカテーテルがツールとして使用されています。
・1970年に医師のスワン先生とガンツ先生が考案したため、その名がついた。
・翌年に熱希釈法が提案される。
・その後、共同研究をしていたフォレスター先生とともに心機能評価法であり、かの有名なForrester分類を提唱した。
という流れで、もうすぐ約50年が経とうとしています。
2)スワンガンツカテーテルってどんなもの?
ざっくり言うと、「圧測定に温度測定、酸素飽和度測定ができるバルーン付きの熱エネルギーを発するカテーテル。ついでに輸液もできちゃいます。ペーシングできちゃうやつもあります。」といったところでしょうか。
おとーふの勤め先では、エドワーズライフサイエンス社さんのスワンガンツカテーテルを使用していますが、カテーテルの構造やスペックは各メーカーさんやカテーテルのモデルによって異なります。
オキシメトリーCCOサーモダイリュージョン・カテーテル®︎model:744F75(Edwards Lifesciences)
①サーミスター&サーミスター・コネクター(黄色ライン)
→血液温度の測定
②サーマルフィラメント&サーマルフィラメントコネクター
→心拍出量測定のため熱エネルギーを発信
③バルーン&バルーン拡張用バルブ(赤ライン)
→血流に乗せてカテーテルを肺動脈まで進める
PAWPを測定
④先端孔&先端孔ルーメン・ハブ(黄色ライン)
→各心内圧の測定〜圧モニタリングキットにつなぐ
⑤注入用側溝&注入用側溝ルーメン・ハブ(青ライン)
→RA(CVP)の測定〜圧モニタリングキットにつなぐ
⑥オプティカルファイバー&オプティカル・モジュール・コネクター
→SvO2の測定(光ファイバー)
これ以外にも、モデルによって輸液用側溝があれば輸液用ルーメンハブが増えるといった感じです。
各ルーメンの特徴と見分け方
ルーメンが多くややこしい感じがするかもしれませんが、カテーテルについている機能1つに対し、ルーメンが1本と対になっています。
上記の①〜⑥順番にみていきますね。
①サーミスター・コネクター(黄色ライン)
温度センサーです。
黄色いラインで先端圧と迷うかもしれませんが、圧モニタリングキットをつなげたり輸液ラインをつなげたりするルーメンは全て、輸液ラインのオスが繋がる形状になっています。なので、こちらは少し長めの黄色いラインでコネクターのタイプです。
②サーマルフィラメントコネクター
モニタリングキットのコード側のコネクターと同じような形状です。白と水色のカラーリングです。
③バルーン拡張用バルブ(赤ライン)
バルーンは肺動脈でウェッジさせるので、動脈の赤ラインですね。バルーンを膨張させるバルブの形も特徴的なので分かりやすいですね。
④先端孔ルーメン・ハブ(黄色ライン)
圧モニタリングキットを繋ぐので、小さめのハブで黄色のラインです。
挿入時には波形を見ながらこの先端圧を測定していきます。キャリブレーションの際にも、ここから採血を行います。
⑤注入用側溝ルーメン・ハブ(青ライン)
ラインの注入用ルーメンは、CO測定の際に冷水を注入するために使用しますが、普段モニタリングの際はモニタリングキットを接続しRA(CVP)の圧を出力しておきます。また、CCO測定が可能なカテーテルの場合にはサーマルフィラメントから熱エネルギーが発信され、暖められた血液との熱希釈法によって測定されるため、冷水の注入は必要ありません。
⑥オプティカル・モジュール・コネクター
四角く大きめなコネクターで目立つので、すぐに覚えると思います。オプティカルモジュールコネクター(OM2)は光源を安定させるため、使用する20分前にはモニターへ接続し温めておきましょう。
3)スワンガンツカテーテルで測定できるパラメーターと基準値
大きく分けて心内圧・心拍出量・混合静脈血酸素飽和度の3つ。
⑴心内圧
・右心房圧(RAP)
2~6 mmHg
・右心室圧(RVP)
15~25(s)/0~8(d) mmHg
・肺動脈圧(PAP)
15~25(s)/8~15(d) mmHg
・肺動脈楔入圧(PAWP)
6~12 mmHg
⑵心拍出量(CO)
4~8L/min
⑶混合静脈血酸素飽和度(SvO2)
60~80%
ビジランスヘモダイナミックモニター®︎(Edwards Lifesciences)では観血的動脈圧測定、HR、CVPを連動し、必要な項目を手入力することで下記パラメーターの測定も可能となっています。
CI / SV / SVI / SVR / PVR / RVSW / RVSW / LVEF / DO2 / VO2
CI cardiac Index : 心係数
SV Stroke Volume : 1回拍出量
SVI Stroke Volume Index : 1回拍出量係数
SVR Systemic Vascular Resistance : 体血管抵抗
PVR Pulumonary Artery Resistance : 肺血管抵抗
RVSW Right Ventricle Stroke Work : 右室1回仕事量
LVSW Left Ventricle Stroke Work : 左室1回仕事量
DO2 Delivery Oxygen : 酸素運搬量
VO2 Oxygen Consumption : 酸素消費量
これらの項目測定が可能なことによって、右心機能・左心機能の両方の評価が可能になっています。
前述した、グリーンのマーカーラインが引いてあるパラメーターはSGカテーテルで必須となるので覚えるか、いつでも確認できるようにしておきましょう。
4)スワンガンツカテーテルの挿入・圧測定・留置時のポイント
必要物品や挿入手順については、施設によって細かな違いがあると思うので各自確認してみてください。ここでは、必ず抑えるべきポイントについて書きます。
カテーテルという名前なので、カテーテル室で挿入すると思う方もいるかもしれませんが、ICUやHCUなどモニタリングが可能であれば、ベッドサイドで行う手技になります。
挿入時のポイント
✔︎アプローチ血管としては、内頸静脈もしくは鎖骨下静脈の穿刺が多いです。
→心臓カテーテル検査などでは、大腿静脈(FV)や上腕静脈(BV)なども選択されますが、持続モニタリングで留置する場合は内頸静脈か鎖骨下静脈が殆どです。心機能が低下している場合や、循環不全の場合の情報源となるため、鼠径にはIABPやAライン、CVなど他のラインが留置されていることも多いです。また、穿刺部位からカテ先の留置部位までは距離が近い方が侵襲も少なく有効ですね。
✔︎穿刺時は、頭低位(トレンデレンブルグ位)とし静脈を怒張させるようにすると医師が穿刺しやすいです。
→病態によっては、しないほうがベターな場合もあるので、医師に確認しましょう。
圧測定時のポイント
✔︎イントロデューサーが留置されたら、SGカテーテルを挿入して圧測定が開始されます。
→準備しておいた圧モニタリングキットのトランスデューサーを先端孔ルーメン・ハブ〈2)の④〉に接続し圧波形をモニターします。この圧波形を見ながら、医師が圧測定を行いカテーテルを留置部位まで進めていきます。
CV挿入時とほぼ同じです。心内圧測定を行い肺動脈に留置する先端圧ルーメンと、RA
=CVP測定の2つの圧をモニタリングしますので、圧モニタリングキットのダブルと圧バッグ(ヘパリン化生食)1つorシングルなら圧バッグ2つを準備しましょう。
✔︎心内圧測定は、右心房圧(RAP)→右心室圧(RVP)→肺動脈圧(PAP)→肺動脈楔入圧(PAWP:ウェッジ)の順で行われます。測定した圧を記録しておきましょう。
→SGカテーテルの先端についたバルーンを膨らませ、順行性に血流に乗せて肺動脈まで進めていきます。それぞれの波形の特徴を覚え、波形を見てカテーテルの先端がどこに位置しているのかを理解しましょう。
正常な心臓の場合、RA圧=PA拡張期圧=PAWP圧となります。圧測定時に、どのくらい誤差があるか知っておくといいですね。
⚠️右室(RV)を通る時はカテーテルの先端が心室壁に当たると、不整脈を誘発しやすいので心電図波形も一緒にチェックしましょう。
→PAWPは楔入(=閉塞)している状態なので、この時右心系(肺)からの影響は受けないため、計測している圧は左房圧(LAP)になります。10〜15秒以内の計測が目安です。また、PAWP測定時のフラッシュは禁忌です!肺動脈損傷の原因となります。
留置時のポイント
✔︎PAWPの測定が終了したら、バルーンを萎ませた状態で1~2cmずつ引き戻しPAPが持続モニタリングされる位置で留置させます。位置が決定したら、挿入の長さを確認し固定しましょう。
→連続測定モニタリング時は、常にPAPの波形が出ていることを確認します。
⚠️万が一、RVの波形が出た時にはカテ先が右室に落ちてしまい、先ほど同様不整脈誘発のリスクが高いため、すぐにDr.callして入れ直しが必要です。心電図波形に注意しながら、医師が来るまで観察を続けてください。
✔︎留置中は、バルーンの膨張用バルブが常にロックされていることを確認しましょう。
→バルーンが膨張すると血流に乗って楔入してしまい静脈の閉塞を起こす危険性があります。
✔︎カテーテルの状態と位置が適切かどうかを示すSQI(Signal Quality Indicator)がモニター画面にレベル1~4段階で表示されます。常に緑色の1or2であることを確認してください。
→黄色の3、赤色の4は近赤外線のシグナルに問題があります。その場合には、カテーテルの位置調整や、先端孔ルーメンの吸引・フラッシュ、再度キャリブレーション、HGBアップデートなどの対応が必要となります。施設基準に従って、リーダーナースやME、医師に報告しましょう。
以上、スワンガンツカテーテルの特徴や管理のポイントを中心にまとめてみました。
少しでも臨床で、役に立てるような情報があったでしょうか?
次回は、測定したデータから心機能や血行動態に何が起こっていると考えられるかなど、看護に役立つ考え方を書いていきたいと思います。
挿絵まで追いつかなかったので、追いつき次第更新していきます。
本日、夜勤のためそろそろ就寝させていただきます(笑)
それでは〜
おとーふ。