人工呼吸器管理⑷グラフィック波形を見てみよう!
2018/5/28→6/7追記・書きかけ分upしました☆
約1ヶ月ぶりの更新になってしまいました。4・5月・・・どこの病院でも新入職を迎え、忙しくなる時期ではないでしょうか?
みなさんが良いスタートアップをきれたことを願って!
本日は「人工呼吸器のグラフィック波形」についてです。
「グラフィックなんて今更?いつも見てるし、見て当たり前。」
「グラフィック・・なんか波形が出ているけど、気にしたことない。」
「なんとなく見ているけど、正直グラフィックがうまく活用できてない。」
など、いろんなナースがいると思います。
ICUなどの重症管理やクリティカルケアでは、人工呼吸器管理は必須となります。そこでグラフィックが活用できると、呼吸器装着中の患者さんの状態が倍以上見えるようになる!と言ってもいいくらい見え方が変わってきます。きっと(笑)。
今日は、グラフィックの基本的な見方とポイントを整理していこうと思います。
グラフィックのチェックポイント5つ
まず、グラフィック波形のチェック項目は下記5つが一般的です。
①気道抵抗・コンプライアンス
②非同調
③Auto PEEP
④エアリーク
⑤基線からの逸脱・波形の乱れ
気道抵抗が上がる、コンプライアンスが低下する、Auto PEEPが発生するなどどれも呼吸の評価としてはマイナスポイントになってきますね。
人工呼吸器は同調性が良いに越したことはないですが、みなさんはどうやって同調性の良し悪しを見分けているでしょうか?ファイティングだけですか?
もしファイティングだけが非同調と思っているのならば、グラフィックについてもっと知識を深めなければなりません。
非同調はトリガーやフロー、タイミングなど様々な因子の影響で発生します。それを見極める大事なツールの1つがグラフィックになります。
「いかに人工呼吸が快適に同調するか」をポイントに、グラフィックを学び日々のケアプランへ役立てていきましょう。
1)グラフィックの基本波形を知ろう
代表的なグラフィックの基本波形は3つ+ループ波形2つの計5種類。
①気道内圧波形
②吸気流量波形
③換気量波形
+
ループ波形2つ
④圧-換気量曲線
(Pressure-Volume Curve)
⑤吸気流量-換気量曲線
(Flow-Volume Curve)
換気様式による基本波形の違い
ここでは①〜③まずの基本波形をチェックしていきます。
縦軸は①〜③の項目、横軸は時間を表します。
呼吸の1サイクルに必要な時間がA〜Fとし、吸気がA〜C、呼気がD〜Fとなります。
A:吸気開始
B:吸気
C:吸気終了
D:呼気開始
E:呼気
F:呼気終了
この吸気:呼気の比率がI:E比です。
波形だけをみると混乱するかもしれませんが、縦軸の気道内圧・流量・換気量を換気様式ごとに表しているだけです。そのため、換気様式を理解していると、波形もすんなりと納得できると思います。
では、換気様式の特徴を思い出してもう一度波形を見てみましょう。
換気様式のおさらいはコチラ↓
細かいことはさておき、一定なのか変化があるのかだけにポイントをおきます。
人工呼吸は基本的に吸気のサポートになりますので、吸気相に注目して先ほどの基本波形をみてください。この特徴を波形に置き換えると、一定のところは四角い波形、変化があるところは山なりの波形というように、言葉通りの波形となっていますね。
VC設定のプラスα知識
VCは一定の換気量を保つ換気様式ですが、設定換気量に到達するまでの流速を矩形波か漸減波かを設定できます。それにより、波形も以下のように変わります。
矩形(くけい)波の特徴
→ガスを一定の速度で送る。
・吸気が短い場合、呼気が長く必要な場合に有効
・呼気時間が長くAuto PEEPが発生しづらい
・吸気時間が短いため最高気道内圧が高くなりやすい
漸減(ぜんげん)波の特徴
→ガスをピークフローまで到達させ徐々に低下。
・吸気流量が低く時間が長いため、換気分布が改善
・呼気時間が短くAuto PEEPが発生しやすい
・吸気時間が長いため平均気道内圧が高くなりやすく低血圧を招きやすい
次に、ループ波形④・⑤についての基本波形をみていきましょう。
ループ波形の基本
ループ波形は1ループが1呼吸であり、呼吸の状態を時間軸で追う前項3つの波形よりも1呼吸の状態をみるにはわかりやすい波形となっています。
〈圧-換気量曲線:Pressure-Volume Loop〉
特徴
・自発呼吸は時計回り、陽圧換気(強制換気やPSV)は左回りに描かれる。
・右上の最も高い位置が最高気道内圧
・吸気開始と上記最高気道内圧を結んだ直線の傾きで肺のコンプライアンスを示す。
〈吸気流量-換気量曲線:Flow-Volume Loop 〉
特徴
・上が吸気、下が呼気を描いている。
2) グラフィックをチェックしてみよう
先ほど1)グラフィックのチェックポイントで5つの項目を挙げましたが、それぞれのグラフィックの特徴をみていきましょう。
グラフィックで異常を見抜くには、基本波形との比較が大切になってきます。そこに病態や状態を合わせて異常のチェックをしていきます。
PCVの場合の気道抵抗の上昇・コンプライアンスの低下時
↓↓後ほどPCV時のグラフィックイラスト追加します。→☆6/7upしました。
気道抵抗の上昇時
・気道内圧は一定で変化なし
・吸気流量の減少、吸気が基線に戻らず呼気が開始
→ガスが何かしらの気道抵抗によりスムーズに入らず、オーバーシュート様となる
・プラトー時間の短縮
・換気量の減少
コンプライアンスの低下時
・フローの低下及びフローがゼロの状態が続き呼気の開始となる
・換気量の減少
VCVの気道抵抗の上昇時
・最高気道内圧が上昇
・プラトー圧設定の場合は、最高気道内圧との差が開大(5cmH2O以上)
・呼気フローの低下と呼気時間の延長
・換気量は一定値に設定されているため変わらない
VCVのコンプライアンスの低下時
・最高気道内圧とプラトー圧の上昇(圧格差は変わらない)
・最大吸気の低下と呼気時間の短縮(短時間で多く吐こうとするため)
Pressure-Volume Loop
・吸気開始と上記最高気道内圧を結んだ直線(点線部分)の傾きで肺のコンプライアンスがわかる。
直線の傾きが低下=コンプライアンスの低下
直線の傾きが上昇=コンプライアンスの改善
非同調をチェック
非同調についての原因は一概には言えないこともあるが、人工呼吸器の原因として多いものは以下が挙げられる。
・吸気終了のタイミングによるもの
・トリガー異常によるもの
・流量異常によるもの
ここからさらにいくつかの原因に枝分かれしている。グラフィック波形の基本から大幅に枝葉を伸ばさねばならないため、今回は割愛としまた別の機会にスポットを当てていきたいと思います。
基本的には、基本波形から逸脱している場合には何かしらの非同調が存在し、呼吸の快適性を損なっていると考えても良いと個人的には思っています。加えて、非同調はグラフィックのみで判別しきれない部分もあるので、断定は難しいこともあります。
↓↓ここから下の記事、多忙にて書きかけです(笑)波形イラスト随時追加していきます。→☆6/7upしました。
Auto PEEPをチェック
Auto PEEPとは、呼気が基線に戻らずに次の呼気が始まってしまうことを言います。
原因としては、呼吸回数の増加や気道狭窄などの気道抵抗の増加があげられます。
VCVでもPCVでも同様の波形になります。
【Auto-PEEPへの対応】
※医師の指示や状態に応じて行ってください。
・呼吸数を減らす
・一回換気量を減らす
・吸気時間を短くする
・PEEPをあげる
エアリークをチェック
換気量波形で呼気が基線のゼロに戻らない時にエアリークを示唆します。吸気で送ったガスが回路外に漏れるためこの様な波形になり、吸気の開始時にゼロへ補正(=基線に戻される)されます。
【エアリークへの対応】
・回路からのリーク
・カフリーク
・気管チューブが抜けかけていないか
・胸腔ドレーンからのリーク
などを疑いチェックしましょう
・・・ループ波形でもエアリークは一目瞭然で、Flow-Volume Loopがループになっていない=クローズドしていない時はエアリークを疑うので、上記をチェックしましょう。
基線からの逸脱・波形の乱れをチェック
これは上記でも行ってきたことですが、波形の乱れや始点・終点の基線からの逸脱などをチェックしていきます。
先ほど挙げたAuto PEEPやエアリークも基線からの逸脱ですし、ミストリガーや回路結露・気道分泌物の貯留なども吸気努力波形や波形の揺れなどとして出てきますので、このチェックを行うことで様々な異常に気づくことができます。
以上がグラフィックの基本波形になります。
呼吸器の測定値だけを見るのと、グラフィックも合わせて見るのではだいぶ情報量が変わってきますね。
より快適な呼吸の評価へグラフィックを活用してみてください。
それではまた次回。
おとーふ。
↓人工呼吸器管理シリーズ▽はじめからおさらいはコチラ↓
人工呼吸器管理⑴適応と合併症を知ろう(VILIと呼吸器管理のスタンダード)