人工呼吸器管理⑶人工呼吸器のモードと換気様式
2018/4/28
本日は人工呼吸器のモードについてです。
人工呼吸器を装着した患者さんの看護を行う上で、一番はじめにぶつかるのが「モードって何がどう違うの?」という疑問ではないでしょうか。
モードに関しても設定項目同様で、モードが呼吸器によってたくさん存在するわけではなく、根本的なモードは同じで人工呼吸器を作るメーカーによりモード名が異なるということを覚えておきましょう。
基本的なモードの違いを理解していれば、異なるタイプの呼吸器でモード名が変わっても難なく対応できるようになります。しかし、基本的なモードの理解ができていない場合は、モード名に振り回され混乱していることも多いようです。
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人工呼吸器の基本的なモードの特徴と考え方
人工呼吸器のモードの前に理解が必要なのが「換気様式の違い」と「呼吸をどのようにコントロール(規定・制御)するか」です。これらの組み合わせが、モード名になります。
換気様式はたった2つ。
a.強制換気→人工呼吸器の設定により行われる換気
か
b.補助換気→自発呼吸+人工呼吸器のサポートで行われる換気
のいずれかになります。
呼吸のコントロールもたった2つ。
A.従量式換気(VCV)
B.従圧式換気(PCV)
このAとBの2パターンだけになります。
人工呼吸器の用語やモードは英語表記や略語が多いので、モードと混在しないようにしましょう。
基本的なモードについては、臨床でよく目にする3つを取り上げていきます。
①A/C(=CMV):補助・調節換気(=持続強制換気)
②SIMV:同期式間欠的強制換気
それでは、1つずつみていきましょう。
1)量換気か圧換気か
☆量換気と圧換気のやさしい理解のコツ☆
人工呼吸器のモードを選ぶ時には、自発呼吸を出すか出さないか(=自発呼吸メインにするか強制換気メインにするかもしくは、自発呼吸に補助をかけるかなど)によって決めます。その時に、人工呼吸器が担うのは主に吸気のサポートを行うわけですが、その吸気を「量」で規定するのか「圧」で規定するのかを選ばなければなりません。
よく肺は風船のようなものだと言われますが、この「換気量」や「気道内圧」が高すぎれば風船は膨らみすぎて破けてしまったり、風船が伸び切ってしまったりする(肺障害)かもしれませんし、設定が低すぎれば十分に膨らまない(十分な呼吸ができていない)ですよね。
そのため、「程よい加減の膨らみ具合」に設定をしてあげることが大切になってきます。
そこで、その膨らみ具合を「入った空気の量」で膨らむのにストップをかけるのか、「膨らむ時にかかった圧」でストップをかけて程よい膨らみ具合にするのかで調整をします。
それが、前者であれば「量換気」後者であれば「圧換気」ということになります。
従量式換気(VCV:Volume Controlled Ventilation)
〈特徴〉
・1回換気量を規定して行われる換気。
・1回換気量や吸気時間は一定に維持。
・換気量は一定になりますが、吸気時にかかる圧は規定しないため変化。VILI予防のためには、適切なプラトー圧の設定が必要。
・吸気流速が一定のため、人工呼吸器と自発呼吸の同調性が悪くなる可能性がある。
従圧式換気(PCV:Pressure Control Ventilation)
〈特徴〉
・最高気道内圧を規定して行われる換気。
・1回換気量は肺コンプライアンス・気道抵抗・設定圧などの環境に影響され変化。
・吸気時間の延長によって、1回換気量も増加する。
・吸気流速が規定されていないため、患者の呼吸努力により換気量が増えるため自発呼吸との同調性が良い。
・自発呼吸が強いとVILIのリスクがある。
◉では、これまでの換気様式(強制換気か補助換気か)とコントロール方法2つ(量換気か圧換気か)をふまえて各モードの特徴をみていきましょう。
2)A/C(補助調節換気:Assist Control Ventilation)
【換気様式】:強制換気
・設定された呼吸数の強制換気を行う。
・設定された呼吸数以上の自発呼吸がある場合も、すべての呼吸に設定された強制換気が行われる。
【コントロール制御】
・従量式(VCV)
もしくは
・従圧式(PCV)
【特徴】
・強制換気により呼吸努力・呼吸筋疲労の減少が見込める
・患者の呼吸努力や要求量と同調性が悪いと、過換気や呼吸努力が増加する可能性がある。
【設定項目】
・FIO2
・1回換気量(VC or PC)
・換気回数
・PEEP
・吸気時間(I:E比)
3)SIMV(同期式間欠的強制換気:Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation)
【換気様式】:強制換気もしくは強制換気+補助換気の混在
・人工呼吸器による換気と自発呼吸の両方を温存できる。
・設定換気回数は強制換気(VCV or PCV)、設定換気回数以上は自発呼吸
・自発呼吸は同期して強制換気または補助(PS)換気となる。
【コントロール制御】
・VCV(+PS)
もしくは
・PCV(+PS)
【特徴】
・設定換気量を維持しつつ、患者の自発呼吸も温存できる。
・2つの換気パターンが混在し、同調性が悪くなりやすい。
・呼吸仕事量が増加する可能性がある。
・A/CとCPAPの中間のモード。
・設定換気回数以上の自発呼吸に対してPS(圧支持)の付加ができる。
【設定項目】
・FIO2
・1回換気量(VC or PC)
・換気回数
・PS
・PEEP
・吸気時間(I:E比)
4)CPAP+PS(持続陽圧気道圧:Continuous Positive Airway Pressure)
【換気様式】:自発呼吸または自発呼吸+補助換気
・吸気・呼気共に気道に一定の陽圧(PEEP)をかけ、呼吸はすべて自発呼吸
【コントロール制御】
・自発呼吸のため制御はなし(バックアップとしての設定は可能)
【特徴】
・自発呼吸での換気のため、呼吸器と同調性が良い。
・自発呼吸が出ない場合や、弱い場合は使用できない。
・気道抵抗や換気補助不足に対して、PSの付加ができる。
【設定項目】
・FIO2
・PEEP
・PS
5)特殊なモード
上記3つが基本的なモードとなり、そこから派生するものがほとんどとなります。
他にも・・・
・APRV
・HFO
・ASV
・MMV
などいろいろありますが、使用頻度は少ないです。APRVなどはARDSでのオープンラングの1つとして近年、使用頻度も上がってきているようです。
6)人工呼吸器の基本的なモードまとめ
以上が人工呼吸器のモードと換気様式になります。人工呼吸器管理の時期や、サポートの程度を考慮した適切なモード選択が行えると良いですね。乱立する用語の多さに惑わされず、本質を習得していきましょう。
それでは、良いゴールデンウィークを(^^)
ナースは関係ないか(笑)
おとーふ。
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