胸腔ドレーン看護管理⑶ここをチェック!観察ポイントとそこから考えられること【観察ポイント・正常と異常】
2017/12/12 更新:2018/2/26
4.観察ポイント
今回は項目4観察ポイントと5正常と異常についてです。ここからの項目は、曖昧な理解のままでは異常時の発見が遅れたり、治療の遅れにつながるなど患者さんの状態に直結してくる部分になります。正しくポイントをおさえていきましょう。
実際、どこを観察したらいいの?【観察ポイント】
①ドレーンの位置・回路・吸引圧の確認
✔️ドレーンの位置は正しいですか?
(レントゲン・挿入部位のずれ・固定位置)
✔️回路に異常はありませんか?
(接続間違え・ゆるみ・外れ・屈曲・閉塞)
✔️適正に水封されていますか?
→青い液体のボトル
✔️設定圧(吸引圧)は指示通りになっていますか?
→黄色い液体のボトル
✔️水封・吸引圧共に設定に満たない場合は、蒸留水を足しましょう
◉詳細は過去記事にありますので、よろしければ参照してください。
「ドレーンの接続」については、緩んでいるとエアリークとなったり適正な陰圧がかからなくなります。そのため、接続部をタイガンという結束バンドで固定を行い、外れや緩みのないようにします。また、MERAなど吸引器側との接続には「カチッ」とハマるツメがついていますので、確認してみてください。
それ以外で観察ポイントの追加が1点あります。こちらは過去記事でも少し触れましたが、再度ピックアップします。
✔️チューブのたるみに排液が溜まっていませんか?
水封・水柱圧で管理しているため、チューブがたるんでいる箇所に「排液が溜まった状態=適正な陰圧がかからない」ということになります。また、性状によっては凝血し閉塞の原因になりかねません。チューブ内に溜まった排液はこまめに排液ボトルへと誘導しましょう。必要であれば、ミルキングを実施します。
②呼吸性移動(フルクテーション)の有無
「呼吸性移動とは」→水封部で確認できます
胸腔内圧の変化により水封部の液面(青い液体)が呼吸に合わせて上下すること。または、チューブ内の排液に移動が見られることをさします。通常、吸気時に陰圧が強くなり、呼気時には弱くなります。(液面変化:吸気>呼気)
✔️呼吸性移動が「ある」か「ない」か確認しましょう
✔️呼吸性移動が「ない」場合、消失した状況はどうでしたか?(体位、疾患・ドレナージの時期、突然の消失か否かなど)
③エアリークの有無
「エアリークとは」→水封部で確認できます(上:②呼吸性移動項の図参照)
水封部に発生する気泡のことです。肺から空気が漏れている場合、もしくはドレーンの接続不良で外気が回路に入り込んでいる場合にエアリークがみられます。
✔️エアリークが「ある」か「ない」かを確認しましょう
→水封部で気泡をチェック
✔️エアリークが「ある」場合
・本当に肺からのエアリークなのかを確認しましょう
→挿入部・創部・回路に問題はないですか?
✔️エアリークが「ない」場合
・次に呼吸性変動の有無をチェックしましょう
エアリークがどこから起こっているか特定できない場合には、ドレーンと排液ボトルの間をクランプしてみましょう。
リークが止まった場合:肺・創部・挿入部のリーク
リークが持続した場合:機械側のリーク
④排液の性状と量
✔️排液の色・性状はどうですか?
・急激な変化はありませんか?
✔️排液量はどのくらいですか?
・1時間あたりとトータル量を把握しましょう
✔️血性排液が持続する場合
・出血に伴う身体所見がないかも確認しましょう
→血圧低下や頻脈・呼吸数上昇や不安・不穏の有無など
(ICUなどでは血液ガス採取時にHbの変動も見ておくといいですね。)
Hb1g/dlの低下は循環血液量約400mlの出血量に相当します。
⑤皮下気腫の有無
「皮下気腫とは」
皮下組織に空気が入り込み腫脹した状態のことです。胸腔内の空気の排出が不十分(ドレナージが不良)であった場合などに、出現します。
✔️皮下気腫はありますか?
→人によって捉え方が異なるので、必ずマーキングをしましょう
✔️皮下気腫があった場合
・程度や範囲・拡大がないかを確認しましょう
✔️呼吸状態の変化も確認しましょう
以上が観察ポイントになります。次項「正常と異常」で、これらの観察ポイントをどう判断するかについて詳しくみていきましょう。
5.観察してみたけどこれって正常?異常?【正常と異常】
観察ポイントをチェックしたあとは、それが正常であるか異常であるかを判断できなければ異常にすぐに気づくことができませんね。
胸腔ドレーンの観察ポイントの中には、呼吸性移動やエアリークが実際に同じ「ある」でもそれを許容範囲として経過観察する場合と、すぐに対応が必要になる場合があります。その線引きは疾患や状態によって大きく変わってきます。
この項目では観察したけれど、それをどう判断するか臨床でよく遭遇するであろうパターンをあげて、みていきたいと思います。
胸腔内圧の正常値
安静時:−5cmH2O
呼気時:−4〜−8cmH2O
吸気時:−6〜−12cmH2O
呼吸性移動(フルクテーション)の有無で考えられること
呼吸性移動「ある」
・ドレーンが開通して胸腔内に留置されており、閉塞がない・有効に働いている=正常と判断するが、胸部外傷などではまれに胸腔外の留置でも呼吸性移動が確認できる場合もあります。
→留置直後であれば、必ず胸部X線で医師による位置確認されたことを確認しましょう
呼吸性移動が「少ない」or「ない」
・気胸が治ってきて肺が再膨張してきた
(肺が再膨張することでドレーンの先端の側溝に密着し、塞がれるため)
・肺切除術後、切除量が少ないとき(肺の虚脱が少ないため)
・体位による一時的なもの
→体位を変えて確認しましょう
呼吸性移動が「ない」または「突然の消失」
・ドレーンが屈曲または閉塞・逸脱・抜去している
→ドレーンのミルキング、固定位置の調整、屈曲の解除をしましょう
・呼吸性移動の消失+水封部が液面上昇し高陰圧になっている
(無気肺の可能性あり)
→吸引・吸痰、医師の指示があれば胸部X線撮影で確認
エアリークの有無で考えられること
エアリークが「ある」
※本当に肺や創部からのリークであることをチェック(前項観察ポイント参照)
・自然気胸の場合:胸腔に溜まった空気をドレナージしているため通常「ある」
→ドレーン留置継続、持続するようであれば手術を検討
「安静時の連続的なリーク」
吸引圧を上回っており、呼吸状態・皮下気腫にも注意
→早期手術
・術後の場合
「軽度のリーク」
肺切除後など軽度は許容、術後2〜3日で消失する
→経過観察
「大量のリーク」
肺や創部からの大量のリーク、場合によっては皮下気腫形成
→去や逸脱等回路チェック・吸引圧変更・閉創・再手術・再縫合
エアリークが「ない」
・肺が膨らみ改善orドレーンが効いていない(位置が悪い)状態
「呼吸性移動(+)」→「胸部X線・気胸腔(+)」→継続or再挿入
「呼吸性移動(ー)」→「胸部X線・気胸腔(+)」 →再挿入
「 呼吸性変動に関わらず「胸部X線・気胸腔(ー)」→ウォーターシール
気胸のドレナージの場合、上記段階で胸部X線を施行することで、判断ミスや思い込みによる緊張性気胸のリスクを回避することができます。X線を施行しない状態でウォーターシールとして経過をみることや、指示受けの漏れ、検査忘れなどがないように十分注意しましょう。
皮下気腫がある場合に考えられること
・【軽度の皮下気腫】挿入時に発生するもの
→マーキング・拡大の有無をチェックし経過観察
・【肺瘻+皮下気腫拡大】ドレナージが不良・効いていない
→固定位置の調整・再挿入
大量のエアリークを伴うまたは頸部以上の皮下気腫は緊急手術
以上で、観察ポイント〜観察したことをどう判断してどんな対応が必要になってくるかまでを学べたでしょうか?
次回は、胸腔ドレーンの管理中に遭遇する「こんな時どうしたらいいの?」やトラブルシューティングなどにスポットを当てていきたいと思います。
少し記事が長くなってしまいました。読みづらかったらすみません。随時、イラスト図などを追加していきます。
おとーふ。
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⑷移動時にドレーンクランプ!?トラブル予防と対処法【注意点とトラブル対応】
⑸ウォーターシールの看護はここをチェック【ウォーターシール管理】
⑹ドレーン抜去の目安と抜去時の看護【抜去時期・ドレーン抜去】