かんごノート by logical nurse

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胸腔ドレーン看護管理⑵低圧持続吸引・チェストドレーンバック【胸腔ドレーンの仕組み】

2017/12/03 更新:2018/6/7

本日はドレーンの仕組みについてです。

3.胸腔ドレナージの仕組み(低圧持続吸引)

 
ERやICUなどで日頃からよくお目にかかる看護師さんもいれば、病棟で突然胸腔ドレーンの患者さんを受け持ち困った看護師さん・・・遭遇する確率は様々だと思います。

仕組みを理解していれば、いたってシンプルな胸腔ドレーンですが。知らないと、事故につながってしまうような側面もあります。

・チェスト・ドレーン・バックってどうなってるの?
・なぜ陰圧をかけるの?
・吸引圧ってどのくらいにしたらいいの?
・水封ってなに?なぜ蒸留水を定量いれておくの?
・水封室(青)の水位が変動するのはなぜ?
・持続吸引って必ずするの?
・エアリークって? 

このような疑問に心当たりはないでしょうか?答えに迷った場合は、「しくみ」をこの機に学びな直してみてもいいかもしれませんね。

そもそも胸腔ドレーンがよく分からないという人はもちろんです、知らないほど怖いことはありません。それでは、一緒にポイントを整理していきましょう。 

1)胸腔ドレーンのドレナージの方法

胸腔ドレーンのドレナージの方法としては2種類。吸引するかしないかです。

・吸引する→持続吸引または間欠吸引

・吸引しない→ウォーターシール(水封)のみ、ハイムリッヒバルブ

のどちらかになります。(ウォーターシールについてはのちほどの項目で。)
ルーチンで吸引を行うかはエビデンスや賛否が問われる部分でもあり、医師の見解も別れるようです。

看護師はその判断を求められることはないので、そっと物議の行方を見守りましょう(笑)ここでは「持続吸引をする場合の仕組み」についてお話ししていきます。 

低圧持続吸引システムにはどんなのがある?

胸腔ドレナージを行うにあたって使用する低圧持続吸引システムは以下2つ。

・吸引配管から吸引圧をかけ、水柱圧によって圧設定を行い吸引すチェストドレーンバックシステム(3ボトルシステム)

・MERA(メラ)サキュームなどの電動式低圧持続吸引器。 

他にもコンピューター制御でコントロールしてくれる機器などもありますが、概ねこのどちらかだと思います。
→体内へ入れたトロッカーカテーテル(胸腔ドレーン)の先を、空気の流入を防ぐためチェスト・ドレーン・バックもしくはメラサキューム用のアクアシールバッグへつなぎ、前者は吸引配管へ後者はMERAへつなぎ吸引圧をかけて管理をしていきます。

f:id:logicalnurse:20171130013549j:plainイムリッヒバルブ

このドレーンバック、販売会社の商品名によりチェスト・ドレーン・バックやキューインワン(Qー1)などと呼ばれます。ちなみに、2本繋げることのできるキューインツー(Qー2)というものもあります。キューインツーは心臓血管外科の術後などに使用することが多いです。

MERAサキュームの器械も通称メラとかメラサと呼ばれ、商品名がそのまま呼び名になっています。アクアシールバッグとはメラ専用のドレーンバックの商品名です。

ちなみに・・・水封以外で空気の逆流を防ぐものとして、天然ゴムを使用した一方弁のついたハイムリッヒバルブ(下図参照)というものもあります。排液がない場合や、コンパクトなのでaie leakがないかごく軽度になり離床を進めたいときなどに使用されることがあります。

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イムリッヒバルブのしくみ

2)チェストドレーンバック(3ボトルシステム)の仕組み

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チェストドレーンバッグの構造・しくみ・各部名称
排液部

・流れてきた排液はここにたまっていく。気体(air)は軽いため隣の水封部へ流れる。

「過陰圧解除ポート」
 過度な陰圧がかかった場合に、ここから滅菌空気を注入し解除します。

水封部(青い液体部分のボトル)

「水封(ウォーターシール)」
定量の蒸留水を注入すると青く染まり、水封部の水圧は−2cmH2O。この液体が胸腔内と外界を遮断して水封となっています。しくみとしては胸腔内から排出された空気を逃がすことはできるが、外気が胸腔内へ逆流しない「一方弁」の役割です。 

「呼吸性移動」
水封部の水位が呼吸により上下に変動することを言います。呼吸性移動を観察することで、胸腔ドレーンが閉塞や屈曲・抜けがなく、開通していることが分かります。 

「エアリーク」
胸腔内から気胸や咳嗽で陽圧となると排出された気体はこの水封部でチェックすることができ、青い液体部分に気泡が出ることをさします。これも胸腔内に気体が溜まっていることを示唆する大切な観察項目となります。 

「逆流防止弁」
水封部の水が排液ボトルへ逆流しないようにするための弁で、強陰圧とならないよう緩和する役割をしてくれます。 

「陽圧逃し弁」
過度な陽圧がかかった場合は、ここで陽圧が解除され胸腔内圧の上昇を防止します。

 

f:id:logicalnurse:20171203015037j:plainこれらの安全弁によって過陰圧や過陽圧となった場合に、皮下気腫や肺瘻を起こしにくいよう予防しています。



吸引圧制御部(黄色の液体部分のボトル)

吸引圧制御部=水圧(黄色+青の水圧)=胸腔内圧」
胸腔内圧に打ち勝つ吸引圧をかけることで、空気導入管より空気が取り込まれ常に一定の水圧(黄色の水の高さの分だけ)がかかるようになります。吸引配管側の圧をいくら高くしても、胸腔内にかかる圧は黄色の水圧の高さの分だけとなります。水封部にも水圧がかかっているため、実際には吸引圧+水封圧が胸腔内圧となります。

f:id:logicalnurse:20171102030951p:plain適正な吸引圧調整と実際の胸腔内圧はどう見る?

吸引圧に打ち勝つには、黄色い水の部分にポコポコと気泡が連続的に出るように吸引バルブを調整します。反対に言えば、呼吸性移動が出ているということは吸引圧が弱い・不足しているということです。

生理的胸腔内圧は−5〜−8cmH2Oです。そのため、それに打ち勝つ程度の吸引圧−10〜−15cmH2Oの設定となることが多いです。この場合、実際の胸腔内圧は−12〜−17cmH2Oかかっていることになります。

参考元:手術・ドレナージ チェスト・ドレーン・バック | 住友ベークライト株式会社様のチェスト・ドレーン・バックを解説図の参考元とさせていただきました。医療機器については院内のMEさんに相談するのも良いですし、メーカーさんの取り扱い説明書が非常に分かりやすく大切なことも書かれているので、困った時は参考にすると良いと思います。 

  

3)そもそも陰圧管理をするのはなぜ?

胸腔胸郭と横隔膜に囲まれ閉鎖されたスペースです。

はよく風船と表現されるように、弾力のある臓器です。しかし、肺自体だけでは膨らみ拡張することはできず、むしろ弾性があるため縮まろうとする力が働いています

この縮まろうとする肺を広げるために一役かってくれているのが胸膜です。

胸膜は、肺にぴったりとくっついた臓側胸膜と胸郭の壁側にある壁側胸膜があります。2つの胸膜は肺門で繋がっており、この間にはわずかな胸膜液が存在し潤滑油の役割をしています。この間こそが胸膜腔であり、まさに胸腔ドレーンを留置するスペースになります。

この胸膜腔は常に陰圧が働いていて、胸郭が広がると壁側胸膜がつられて広がり、密着している臓側胸膜も引っ張られて広がり、結果肺も膨張して拡張するというワケです。

 

f:id:logicalnurse:20171203015037j:plain要するに胸腔が陰圧にならない限り肺はしぼんだままということになります。ですから、様々な原因でこの陰圧を保つカラダのシステムが破綻してしまった場合に陰圧管理をすることで、肺が膨らむための働きを代替してあげる(=胸腔ドレーンの目的)ためということになります。

ただし!!胸腔ドレーンを入れたら必ず持続吸引するわけではありません。ウォーターシール管理で十分であったり、肺を虚脱させることで肺瘻を小さくさせる場合などもあります。医師の診断と指示に従って、適正な管理を行なっていきましょう。

↓実際の観察ポイントとその見分け方後日upしましたー。 

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 ↓対応でお悩みの場合は、こちらを見てください。 

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胸腔ドレナージの仕組みについては以上になります。MERAについてもそのうち追記していこうと思っています。
↓ウォーターシール(MERA)については1/12にupしましたコチラからどうぞ。 

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 ↓ドレーン抜去についてはコチラ。

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「ドレーンの仕組み」についてたくさんお読みいただいてますので、合わせてお読みいただくと現場で困ることは少ないと思います。6/7上記、過去記事分のリンク追加しました。 

 

それではー。

おとーふ