バルーンカテーテル蒸留水を使う理由は?-お困りナースへ送る先輩ノートNo.1-
2018/02/02
先輩ノート第1回は、
「バルーンカテーテル蒸留水を使う理由は?」
という先輩からのツッコミ&あるある質問だと思います(笑)1年目のナースや学生さんあたりによく出題されるのではないでしょうか?
ツッコミと言えどこれはバルーンカテーテルを扱う以上、知っていて欲しいポイントでもあり知っていなければならない知識です。
今日はこの質問に加えて、バルーンカテーテルの豆知識を色々とお伝えしていければと思います。
バルーンを膨らますのはなぜ生理食塩水や水道水ではダメで、蒸留水なのでしょう?
回答:生理食塩水の場合、塩分が析出し結晶化してしまいバルーンを膨らます注入経路を塞いでしまい、抜く時にバルーンから注入した生理食塩水を回収できなくなる恐れがあるため(バルーンをしぼんだ状態に戻せないため抜けなくなり、さらなる処置が必要になってしまいます。)です。そのため、塩分などの含まれていない滅菌蒸留水が選択されます。
キットなどでは、もともと滅菌蒸留水入りのシリンジが準備されています。
水道水も塩素が含まれているため、同様の理由になります。
バルーンが膨らんだまま抜けなくなったらどうするの?
では、誰かがうっかり先ほどの蒸留水ではなく生理食塩水や水道水で膨らましていた場合など、バルーニング様の蒸留水が回収できなくなった場合について。
回答:稀に強い陰圧で閉塞してしまった場合は、2ml以内程度の少量の蒸留水を追加しポンピングすることで陰圧による閉塞が解除されます。
ポイントとしては、よくやっているナースも見かけますが「シリンジで吸引して蒸留水を引く」がNGです。自然に押し出されてくるので、それに従ってゆっくり引きましょう。
《それでもダメな場合》・・・ここからは、まず医師へ報告しナースが行えるのは下記1・2もしくは3番程度までだと思います。膀胱や尿道損傷のリスクも上がるため、医師や泌尿器科専門医が行う処置になります。(簡易化してありますが、詳細は使用メーカーの取扱説明書を参考にされると良いと思います。)
1.インフレーションファネルをカット
2.シャフトの切断
3.インフレーションルーメンへ直接アプローチ
4.インフレーションルーメンへ鋼線を差し込みバルーンを膀胱内で破裂させる
5.バルーンを100~200mlを体温程度に温め、注入し針をインフレーションルーメンへ差し込み大量の水や鉱物油で破裂させ、膀胱洗浄をする
6.透視下またはエコー下での膀胱穿刺を行いバルーンを破裂させる
このように、閉塞理由は様々かもしれませんが、蒸留水と生理食塩水を間違えるといったうっかりミスで、患者さんの体に「侵襲的処置が必要となる一大事」を招きかねません。こうなりうることを知っていれば、危機感をもて日常的な処置へも十分に配慮を行えると思います。
参考元:株式会社メディコン バードバイオキャスフォーリーカテーテルhttp://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/780045/780045_20400BZY00541A01_B_01_02.pdf
バルーンカテーテル豆知識
尿道留置カテーテルのフレンチ(Fr)ってなぁに?
回答:1フレンチ(Frは)3分の1ミリ(mm)です。
例えば、バルーンカテーテルでよく使用される成人サイズの14〜16Frは3分の1にしたものが㎜にあたるので、カテーテルの外径が約4.7〜5.3㎜ということになります。
バルーンカテーテル以外にもこんなものはどうでしょうか?
✔️挿管チューブ→〇〇mm
✔️経鼻エアウェイ→〇〇mm
✔️吸引チューブ→〇〇Fr
✔️トロッカーカテーテル→〇〇Fr
✔️NGチューブ(経鼻胃管)→〇〇Fr
✔️ブラッドアクセスカテーテル→〇〇Fr
と、ミリで綺麗に表示できない5.3ミリなど中途半端なサイズはフレンチで表示されていることが多いですね。
挿管チューブは〇〇Frと間違えて覚えて記録している人をよく見かけます。7.0Frの挿管チューブなんてことになったら、径1.3mm程度という・・・ものすごい細い挿管チューブ!もはや挿管できないレベルになります(笑)
迷った時は、mmに直してみておかしなサイズは大体Frになります。正確な使い分けができると良いですね。
バルーンカテーテル、フォーリーカテーテル、ネラトンカテーテルなど何が違うの?
施設によって「バルーン」や「フォーリー」など呼び方が様々ありますね。
回答:フォーリー(forley)カテーテル というのはいわゆるバルーンがついたカテーテルでバルーンカテーテルと同じものになります。
ネラトンカテーテルは、バルーンがついていない一時的な導尿などに使用するカテーテルになります。
他にも・・・材質によってゴム素材のラテックス製やシリコン製などがあります。
また、使用用途によって2wayや3wayなどがあります。
〈2way〉尿の排出を目的としたよく見かけるタイプです。
〈3way〉膀胱の持続洗浄をしたい場合や、泌尿器科の前立腺や膀胱の術後、TUR術後などによく用いられます。先端に洗浄液の流入口と排液の流出口があります。
目的に応じて、適切なサイズとタイプを選択しましょう。バルーンカテーテル留置は医師が行う施設もありますので、よく確認してから行ってください。
本当にバルーンカテーテルが必要?
バルーンカテーテルの留置は、患者さん側から考えると侵襲や違和感のある処置であったり、見た目にもバルーンバッグをつけて歩くことに抵抗がある方もいると思います。医療者側からみると、水分バランスや輸液の管理を行う上で尿量の測定が正確に行えたり、尿失禁がないためオムツ交換が簡易であったりと利点も多いように思えますね。
しかしながら、1週間〜10日程度の留置で約半数が尿路感染症を引き起こすと言われています。知識の浅いナースは、「べつに尿路感染症なんて大したことないでしょ。」って思った人もいるのではないかと思いますが・・・。生命予後不良と言われる「敗血症」の原因の感染である20〜30%は尿路感染症とも言われています。
感染してしまった場合には、感染兆候に早く気づき早期対応することが求められますが、「不要な感染を起こさない」ことがまず大切です。
そのため・・・
✔️本当にバルーン留置が必要な目的があるのかを考える(安易に失禁管理のためなどはNG)
✔️必要な場合であっても、できるだけ短期間の留置と使用期間を短くする
✔️たとえ術後であってもルーチン使用は望ましくない
現在は、「なるべく不要なものは留置しない」が基本の考え方になります。いまいちど、必要性を考えてみても良いかもしれないですね。
以上になります。いかがでしたか?
普段、バルーンカテーテルはナースにとって日常茶飯事とも言える処置であり、急性期だけでなく慢性期や療養・在宅などでも使用されていることも多いと思います。
どの処置も同様ですが、物品の特性・体への侵襲・機能のメリットデメリット・トラブルシューティングなどよく理解していくと、知らないナースとは段違いの看護ができるナースになっていくと思います。
今日のパイセンノートはこれでおしまいです。
おとーふでした。