ドレーン看護管理ミルキング本当にやって大丈夫?④ミルキングしても良いドレーンとミルキングしてはいけないドレーン
2017/10/24
ドレーン看護管理
④ミルキングしても良いドレーンとミルキングしてはいけないドレーン
についてです。
ドレーンといっても多種多様で、各科や留置部位によって異なることはこれまでにお話ししてきました。
ドレーンが様々なだけではなく、看護においても各々に見合った管理を行って行かなければなりません。中でも、「ミルキング」という手技については行っても良いものと、禁忌となるものがあるので注意しなければなりません。また、禁忌ドレーンにおいても医師の指示で、ミルキングを要する場合もあります。
どちらにせよ、迷った場合には医師に必ず確認をとりましょう。
Q.そもそも「ミルキング」ってなぁに?
A.ドレーンに貯留した排液を排液バッグの方へと流すことをいいます。
ミルキングする様が搾ったりしごいて排出するため、「milking=乳搾り」といわれています。
Q.ミルキングってどうやってやるの?
A.ドレーンの挿入部側を圧迫(クランプしたような状態)し、ミルキングローラーもしくはアルコール綿でドレーンを挟み、指で圧迫したまま、排液バッグ側へ滑らし貯留物をバッグへ押し出していきます。
(貯留しているものがやや流動的であれば、指でドレーンを軽く弾くと流れていくこともあります。)
簡単にですが、絵に描くとこんな感じです↓↓
【注意点&ポイント】
利き手を滑らせ、貯留物が排出できたら柔らかいドレーンの場合空気も一緒に押し出され陰圧がかかってしまうので、必ずドレーンが元の状態に膨らんだのを確認してから左手の圧迫部を解除する。
なぜならば・・・過度の陰圧がかかり、ドレーン留置部周辺の組織などを吸い込み吸着してしまい、組織損傷や出血・ドレーンの閉塞となる危険性があるため。
(ちなみにアルコール綿は滑りを良くするだけのためなので、他のもので代用でもかまいません。)
Q.ミルキングしても良いドレーンといけないドレーンって?
A.そもそもルーチンでミルキングを行う必要はありません。排液の性状を観察し、ドレーンの閉塞するリスクがあればそれを回避するために行います。
まずは「ミルキングしてはいけないドレーン」に注意しましょう。また、低圧持続吸引など一定の圧をかけて吸引している場合はほとんど行いません。稀に、医師判断で必要な時のみです。以下、具体的にあげていきます。
【ミルキングしても良いドレーン】
〈心嚢ドレーン〉
開心術後、出血も多く閉塞リスクも高いのでしっかりと行います。閉塞すると、心タンポナーデを引き起こすので要注意です。
〈胸腔ドレーン〉
フィブリン塊や血液などで閉塞しそうな場合にはミルキングしますが、持続吸引していることが多いので医師判断に委ねることが多いです。
〈腹腔ドレーン〉
臓器内ではなく、腹腔内のドレーンであれば通常行っても可能です。
イレウス管・PTCD・ENBDなど。
後述しますが、膵管チューブは基本的に禁忌です。
【ミルキングしてはいけないドレーン】
〈脳室ドレーン・脳槽ドレーン・スパイナルドレーン〉
これら脳外科領域のドレーンはナースサイドでのミルキングは禁忌です。医師判断で必要な場合にのみ行うこともあります。ミルキング手技でも記載しました、ミルキングにより組織が吸着され、ドレーンの閉塞や組織の損傷を招く恐れがあります。
〈膵管ドレーン〉
ミルキングにより、胆汁や膵液の逆流を起こし漏れ出てしまう恐れああります。胆汁や膵液が腹腔内へ漏れ出ると、組織や内臓脂肪の融解などと共に重篤な腹膜炎を引き起こします。そのため、原則ミルキングは禁忌です。
ドレーンの目的や留置部位を考えると、おのずとミルキングして良いか・しないほうが良いかが見えてきますね。業務や手技をルーチン化せず、意味や治療の目的を考えながら行っていきましょう。
以上で、全科共通でのドレーン看護管理はおしまいになります。また、各科ドレーンについては追々おさらいしていきたいと思います。